SDA Award

SDA Award2022

日本サインデザイン賞2022年度審査総評

第56回SDA 賞に応募された作品は2021年度に制作された作品であったが、新型コロナウイルスの感染拡大は収まるところを知らず、その影響もあって応募作品の減少や、建築の新築絡みのサイン計画の応募が例年より少なかったのは残念であった。しかしながら、応募された作品はいずれも素晴らしく、二次審査にあがった作品は、順位の付け難い作品ばかりであった。

2021年のトピックとしては1年延期された東京オリンピック2020で、無観客でおこなわれた大会ではあったが、歴史的に記憶に残る大会となった。特にピクトグラムについては、世界的な話題を呼び起こしたのである。57年前、(SDA発足時の協会顧問であった)勝見勝(かつみ・まさる)氏が若手グラフィックデザイナーを集めて、東京オリンピックの施設・競技のシンボルマークをプロデュースした。後にそれはピクトグラムと呼ばれるようになり、世界的知られるようになるが、今やサインデザインにとってピクトグラムは重要な表現要素であり、注目すべきアイテムである。57年後再び開催された東京大会では、「動くピクトグラム」として64年大会のマークのイメージを引き継ぎ、さらに進化したものとして登場した。ピクトグラムという存在を広く一般に浸透させたことはとても評価に値するものであった。

ここ数年の傾向として、企業ミュージアムや工場のサイン計画を目にすることが多くなってきた。「SHISEIDO BEAUTY SITE サイン計画」は、工場見学ルートを「美の旅路」と謳い、サインが道標として美しい色彩と共に空間構成の重要なファクターになっている完成度の高さが大変評価された。

「おおぐろの森⼩学校+中学校 サインプロジェクト」は木を使った学びのサインが廊下や階段にあふれ、建築空間をより魅力的な空間へと発展させたものであった。図書館や学校など、近年木造または木質空間が多くなってきており、そうした背景の中のサインが目立ってきている。

こうして今回の数ある優秀な作品の中から日本サインデザイン大賞・経済産業大臣賞に選ばれたのは「Sony Park展サインデザイン」である。会期とテーマを変えながら、巧みなタイポグラフィによって様々な展示情報を整理し、無駄のない統一感を見せたこの作品は、「銀座の庭」というかつての銀座ソニービル建築当初からのコンセプトを受け継ぎ、銀座の街を彩った秀逸なサインとして評価された。

特別賞には「『美しい街岡本協議会』住民主体型のルール&ガイドラインづくりの活動に対して」が選ばれた。屋外広告物の独自ルールを運用し、街づくりに成果を上げてきた活動が認められたもので、屋外広告物を規制の対象物としてではなく、まちづくりの一環で欠かさないものであるという認識を広めた成果は大きい。

最後に、長年SDA賞の外部審査員を務めてきていただいた橋本夕紀夫氏が、3月に急逝され、審査会にご出席が叶わなかったことをご報告するとともに、故人を偲んでご冥福をお祈りする。

令和4年10月吉日
公益社団法人日本サインデザイン協会
会長 竹内 誠