SDA Award

SDA Award2023

日本サインデザイン賞2023年度審査総評

57回を迎えた日本サインデザイン賞は、一次審査、二次審査、最終審査と3回の審査プロセスを取ることとなり、これまでの一次審査、二次審査の間に、もう一つ審査プロセスを加え、最終審査にあげる作品の精査を行うこととした。サインデザインは今やその造形/グラフィック表現だけではなく、SDGsからみた価値観や、作品の社会性が問われる時代となっており、写真審査ではなかなか読み取りづらい作品の「制作意図」や「制作背景」をより重視するようになってきている。

今年度含め、近年の傾向で見られるのが図書館のサインに進歩的なものがみられることである。インターネットの普及により出版不況やまちの本屋が消えていく傾向にあるが、「知の宝庫」としての図書館はここ数年全国各地で新設、建替が顕著であり、その役割はますます重要になってきているようだ。各自治体も、膨大なアーカイブを保存するだけではなく、一般の利用者にどのように利用しやすくしてもらうかにアイデアを募らせている。「石川県立図書館」では巨大な空間の中で、単なる分類項目を並べるのではなく、本を選ぶ目的を表記した「インデックス(目次)」を空間の中で効果的に見せていた。今回大賞をとった「中央区立郷土資料館」は図書館と融合した博物館として、その展示の手法をあえて図書館で本をみつけるような発見の楽しさが加えられている。

もう一つの傾向としては、研究所や会社のワークスペースなど「特定空間」つまり、公共ではない、社員や来訪者に限られた施設のサインが増えたことがあげられる。サインのある空間が、居心地の良さや、新しい発想やクリエイティビティを刺激する環境としてデザインされてきていることに興味を感じた。

さらに、今年は海外からの応募も増え、上位作品にノミネートされる傾向がでてきたことも加えておきたい。

令和5年12月吉日
公益社団法人日本サインデザイン協会
会長 竹内 誠