九州地区 関西地区合同研究会開催しました

関西地区・九州地区合同研究会
日時:平成28年9月23日(金)16:00〜18:00
場所:神戸芸術工科大学
参加者:関西地区10名 九州地区9名

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九州地区は関西地区との合同研究会を開催しました。今回の研究会は、SDA名誉会員であり、本年度より神戸芸術工科大学副学長に就任された佐藤優先生にご協力をいただき同大学での開催となりました。

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朝8時半に博多を出発、神戸に着き、最初に訪れたのは「竹中大工道具館」。日本で唯一の大工道具の博物館で、大工道具の進化の歴史や道具の使い方、海外との違いなど、様々な観点から日本の大工道具を見ることができます。敷地内は木々が生い茂っており、敷居を跨いで見えるのは広い中庭と瓦屋根の博物館。入口の自動ドアは木を削った跡が美しい名栗仕上げの木製扉で、内装も至る所で職人さん達の仕事を見ることができます。当日は企画展「土のしらべ、和の伝統を再構築する左官の技」が催されており、実際に左官で仕上げられたられた土壁や数多の左官道具の展示、名匠 久住章さんの映像放映など、すごく魅力的な内容でした。そこで目に付いたのは時代が進むにつれて増えていく道具の多さ。一概にノコギリといえどもそこには数多のサイズや形状の違いがあって、大工さんたちの仕事へのこだわりと、道具を作る職人さんのそのこだわりに応えようとする姿勢が見えてきます。大工さんたちの技術の向上もありますが、それに伴って道具を作る職人さんたちも技術を向上させてきました。技術向上の上で必然であったかのようですが、そこには大工さんと道具作りの職人さんのお互いの強い思いがあったからこそ底上げされてきた日本の技術であると感じました。

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その後訪れた神戸芸術工科大学では佐藤先生と九州地区、関西地区からそれぞれ1名ずつ、計3名の方々が携わった仕事を踏まえてのプレゼンテーションが行われました。

トップバッターは佐藤先生。様々な仕事を紹介、それに対して教訓と称し、そこから学んだことを次々と呈してくださいました。先生のゆったりした話し方とは裏腹に、合間に入る“教訓”はデザインする者にとってすごく重みのある言葉でした。先生は神戸に来る以前、福岡にいたこともあって福岡の事例・良い点を発表におりまぜていました。福岡が改めて素晴らしい街であることを実感しました。

次に九州地区から中牟田さんの「福岡市立こども病院」のプロジェクト発表。このプロジェクトには市内の小・中学生のこどもたちや数多くのデザイナーが携わっており、プロジェクト進行の苦労とその楽しさについて、担当者である氏だからこそ語れる、数々のエピソードを聞くことができました。そしてスライドに映し出される企画書のタイポグラフィーやレイアウトも美しく、プレゼンテーションの技術においてもおおいに勉強になりました。

3番手は関西地区の吉田さん、「大阪市営地下鉄サインリニューアル」に関して。市営地下鉄のサイン変更は40年ぶりだそうで、継ぎ足し継ぎ足しで行われていたサインの現状を把握することから大仕事だったそうです。なおかつ大阪市営地下鉄という超大型公共機関に対してのサイン計画は非常に苦戦を強いられたそうです。公共事業において何かを決定するまでにどれほどの時間を労力が必要か、を目の当たりにした発表でした。

最後に「福岡市立こども病院」「大阪市営地下鉄サインリニューアル」両方に携わった会長、定村さんが補足。両者ともに言えることとして、思い通りにすることの難しさ、しかしそこに強い思いを持ってやることの重要性を説いてくれました。

3つの発表すべてに通じていることは「信念」でした。デザインという仕事には様々な障害があり、それを乗り越えることの難しさと苦難があります。しかしそれでもデザインする対象にとことん向き合い、真剣にデザインでもってどうにかしよう、良くしようとする姿勢が滲み溢れていました。

竹中大工道具館、そして御三方のプレゼンテーションを通して、本当に「信念」を持ってデザインをし続けているかと問いかけられているようで、身の引き締まる神戸研究会でした。

レポート:九州地区 加藤 美香

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