デザインによる再生 vol.1開催しました

公開プレゼンテーション『那覇バスターミナルの再構築』
平成27年4月22日(水) 東京ミッドタウン/デザインハブ

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公益社団法人日本サインデザイン協会では、サインデザインの普及と啓発を目標とし、一年を通じて様々なセミナーや研究会を開催しています。
今回は「デザインによる再生」をキーワードとした新しいプログラムで、同じテーマに対して異なるプレゼンターが、自由な視点からデザインによる解決方法のプ レゼンテーションを行うことで、交通インフラや公共施設、ひいては地域や都市、日本を活性化させるデザインを考えることを目的としています。
第一弾のテーマとして「那覇バスターミナルの再構築」を取り上げ、公開プレゼンテーションを行いました。

今回のプレゼンテーターは、今のサインデザインを牽引し、しかも異なる得意分野を持つ、竹内誠氏、前田豊氏、島津勝弘氏、宮崎桂氏の4名が揃いました。
当初85名の定員としていましたが、それを大きく上回る125名が参加され、非常に盛況な会となりました。

初めに、モデレーターの渡辺太郎より、鉄道がない沖縄におけるバス交通網の重要性、それに対して現状のバスターミナルのサインやバス路線図などが十分に整備されていないことなど、那覇バスターミナルの現状と抱える問題点等について説明を行ないました。

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サインがつくる建築 サインデザイナーならここまでできる建築の再構築
竹内 誠 (株式会社竹内デザイン代表取締役/SDA副会長)
最初のプレゼンターの竹内氏からは、建築家の視点を活かしてバスターミナルの建築そのものをデザインし直し、空間創りの段階からバスターミナルの動線を最適化するという提案が行われました。サインの表示だけではなく、空間自体によって利用動線の分かりやすさを創り出すにはどうするかということや、サインを空間と融合させるにはどうすればいいかなど、総合的かつサインの本質に迫る提案でした。

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沖縄のバスを考える デザインで再構築する、沖縄のバスシステム
前田 豊(氏デザイン株式会社代表取締役)
前田氏からは、他国でも行われているBRT(バス・ラピッド・トランジット)のシステムの解読や現地調査での気づきをもとに、沖縄らしい形「花ブロック」の モチーフをデザインの中心に据えた提案が行われました。バス停、バスの車体、広告、その他アメニティなど、バスにまつわる全てにデザインを展開することで 沖縄バスのブランドを作ることを目的としたものであり、短いプレゼンテーションの時間内でも一連のデザインが強く印象に残る程、徹底的にビジュアルアイデンティティが展開されていました。

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わった~バスの新たなデザイン戦略 全国初、シビックプライドで地域のバスをデザインデリバリーする。
島津 勝弘(島津環境グラフィックス有限会社代表取締役/SDA常任理事)
島津氏からは、市民にバスへの出資を募りその証が見えるデザインを展開することで、このバスは自分たちのバスである、という誇りや親しみを持ってもらえる沖縄のバスにしよう、という戦略が語られました。富山ライトレールなどの豊富な事例が紹介されることで「確かに可能かも知れない」と思わせる説得力のある提 案となっており、終了後の質疑でも多くの質問が挙がりました。

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presentation 4
まちなかの未来遺産 バスターミナルは未知への出発点。さあ出かけよう、時空を超えた知の旅へ。
宮崎 桂(KMD Inc.代表取締役/SDA副会長)
宮崎氏の提案は、そもそも那覇バスターミナルが沖縄にとってどのような意味を持っているか?というところから始まりました。現在の那覇バスターミナルは、沖 縄の日本復帰後、自動車が右側通行から左側通行に変更されるタイミングで建て替えられたもので、歴史的にも建築的にも価値のあるものであることが説明され ました。それを踏まえて、ターミナルの形は活かしつつ、そこにある歴史も理解出来るようなコンテンツを掲示してはどうかという提案が行われました。

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最後には那覇バスターミナルの事業者である第一交通産業株式会社の方や、実際の再生計画を進める株式会社国建の方からもコメントがあり、実際には既に対象地 の計画は進行しているが、どのアイデアも素晴らしいものであり、これらの内容をぜひどこかに取り入れていきたい、という前向きなご意見を頂く事が出来まし た。

今回のプレゼンテーションは、事前の調整を行ってテーマに対する一つの回答を導くものではなく、どのような展開になるか、どのような結果が残るかという期待と不安の中で始まりました。
結果的には4人のプレゼンテーターより全く異なる視点で、それぞれ素晴らしい提案が示されました。参加者に新しい気付きや驚きを与える、この会ならでは意義のある時間になったと考えています。提案のクオリティも密度も非常に高く、「デザインの再生」というテーマに対するデザイナーとしての気概を感じることが出来 ました。また、今回は特に、各方面の専門家から事業者まで、広くこの内容を伝えられたということで、「デザインによる再生」の可能性を、今後行われる様々 な実際のプロジェクトに展開していくことが出来る可能性が高まったと考えています。

セミナー委員長 渡辺 太郎

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