テーマ:「私が最近涙したこと」 馬田 由貴

「自分たちは不要不急、要らないって言われているみたいで悲しい。」

新日本フィルハーモニー交響楽団のとあるトッププレイヤーの言葉です。

 

2020年、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。日本でも不要不急の外出は控えるよう呼びかけられ、エンターテイメントに携わる人々は次々と仕事を失いました。この出口の見えない凶事は業界のみならず、日本全土に暗い影を落としました。

 

例外なく、我が家にもその余波は訪れました。娘の保育園の休園と、夫婦揃ってのテレワーク。控えめに言って地獄です。

2歳になった一人娘は好奇心旺盛、なんでも自分でやりたがり、出来なくて癇癪。ご飯はアンパンマングミしか食べたくないし、お風呂はバスボールがないと入りたくないし、オムツは着けたくない!けれどトイレには行かない。時間をかけて用意した夕食をわざとひっくり返された時には怒りを通り過ぎて本気で泣きそうになりました。育て方を間違えたのかもしれない……たった2年で育て方も何も無いのは分かっていますが……泣きわめく声のなかでは私も冷静では居られません。

夫に関しては、ここで多く語れないのですが、「亭主元気で留守が良い」とは言い得て妙。

 

とそんな私を支えてくれていたのが、音楽でした。

私は趣味でサックスを吹きます。子供を産んでから少々遠のいておりこの頃は専ら聴く専門ではありますが、音楽は私の心の支えであり生きがいです。

このコロナ禍で演奏会などのライブ活動が軒並み中止されていくなか、ミュージシャンたちは知恵を絞り動画配信サービスなどを使い素晴らしい演奏を届けてくれました。中でも私が一番心を打たれたのが、テレワークアンサンブルなる、それぞれ「ステイホーム」を守りながら紡ぎ出された合奏です。ポップスからクラシックまで色んなジャンルのアーティストがメッセージ性の高いアンサンブルを配信しており、私はそれらにリアルでは味わえない感動を受けました。苦しい思いをしているミュージシャン達が「コロナに負けるな!」「元気だしていこう!」と。視聴しては感涙を禁じ得ず……それらは夜な夜な私を励まし、前を向かせてくれました。

こんな時代だからこそ、エンターテイメントの必要性を強く感じています。エンターテイメントは人生を彩り、喜びや癒しをもたらす、無くてはならないものだと思います。本質は守りながらも、手法やアプローチを模索し、変化を恐れず進んでいくことが大切なのだと学びました。

 

娘が大人になって、素晴らしいエンターテイメントに囲まれ喜びに溢れた暮らしが送れるよう、オカンは頑張っていきたいと思っています。

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