関東地区 サインセミナー「空間をつくる」

2月21日(木)16時30分から、サンゲツ品川ショールームでSDAサインセミナーを開催した。講師は、会長の宮崎桂氏をお招きし、第52回日本サインデザイン賞における大賞、金賞等を受賞したプロジェクトを中心に、「空間をつくる」と題して講演いただいた。

 

「道の駅 川場田園プラザ サインリニューアル計画」:日本サインデザイン賞 大賞・経済産業大臣賞

全国にも知られた群馬県利根郡の道の駅だが、既存のサインが多く設置された施設の改修であったため、様々な試行錯誤があった。サインはなるべく使えるものは活かすようにしたが、その際、サインの上からカバーを付ける案がスタッフから挙がった。カバーのイメージは、畔板(あぜいた)という畑に使う道具である。実際の設置にはガリバリウム鋼鈑を使用し、押さえるためのフレームを組んで、その上から巻き付けた。これまであまり例のない方法を試みたことが、SDA賞でも目を引いたかと思う。

波板の形はきれいだが文字が歪んで見えるため、正体からやや横に変倍をかけたものを使っている。結果として正面から読み取りやすくなったが、一方で横方向からはゆらめくように見える。これも多少の難はあるが、それぞれのサインが何を要求されているかを考えながらデザインしていくのか本当かなと思った。

 

「新山口駅 北口駅前広場 0番線」:日本サインデザイン賞 金賞

JR西日本が管轄する新山口駅の北口に一番近いのりばが1番線で、その外側にある場所であることから「0番線」と名付けた。このネーミングをコンセプトに広場の空間を作っていった。名称は市民にも定着し、着手から6年を経て完成した。交通機関が稼働する中で行うため、それだけの年月を要することとなった。

自由通路には細く鋳物を敷き込みレールに見立てている。通路は明るくシンプルにして、消火栓やAEDなども景観に馴染むよう工夫した。

吊り型のサインはシンプルな設えとし、改札出口から通路に沿って展開させた。細い丸柱に絡めるような誘導サインとしている。これらは事前に設置場所を決めておかねばならず、丸柱の建つ以前から計画し準備をしたため、サインだけでは解決できない苦労があった。

サイン自体は厚さ30ミリほどのステンレス製の箱サインである。長いサインは最終地点に向かうほど徐々に短くなって終わるというストーリーを持たせている。

タクシー、バスのグラフィックを原寸の大きさで壁面にあしらい、のりばであることを示した。もとは「仮設バス待合所 みんなの黒バス」という仮設置のときのプロジェクトがきっかけで、黒バスも市民が付けた名称である。それを本設に活かしたのがバスのグラフィックだった。さらに、山口線を走る蒸気機関車も壁面グラフィックに仕立ててイメージの連続性をはかった。また、地元小郡ゆかりの俳人である種田山頭火や詩人の中原中也のグラフィックも配して、その土地らしさを出した。

 

「ORIGAMI」:日本サインデザイン賞 銀賞

中国海南島のリゾート施設でのプロジェクトである。既存施設のサイン改修だった。広い場所で立体物を置く案をいくつか提示したところ、折り紙の案が採用となった。

日本ではない場所で行う苦労もあった。折り紙の施工図を立体的に書き、縮小した模型をすべて作った。図面は日本で起こしたものを中国の業者に渡して製作した。

現地の人が何を大事にしているかというと、バカンスの時に家族で遊べることだった。子どもから大人まで、幅広い年代で過ごせることを大事にしている。取り分け、子どもにも親しみやすいものが良いということになった。庭が広くランドスケープの充実している場所なので、シカ、リス、ウマ、ウサギ、トリなど、海南島に生息している動物を作り設置した。日本であらかじめ原寸大のサインを作り、斜めに置いたものがどのように建つか検証も行っている。

 

「横浜商科大学 開学50周年記念館」:日本サインデザイン賞 銅賞

まずは建築家にどのような建物なのかを聞くところから始めた。メッシュ状のエキスパンドメタルがたくさん使われていることを知り、これをサインの素材に使ってみることにした。材料を曲げる作業は、施工業者に交渉したが難しいとの回答だったので、カットするやり方へ発想を変えた。サインに使う大きな数字やピクトグラムを、さらに細かい目のエキスパンドメタルを切って設置した。これは手切りで行っている。日本語など細かい文字には切り文字を使った。施設の大きさが小規模だったことが幸いし、細かい作業にも対応してもらうことができた。ガラス面にはインクジェットシートでメッシュ柄の文字を貼り、同じようなパターンにするよう心掛けた。

 

「目黒セントラルスクエア」:日本サインデザイン賞 銅賞

ポイントの一つとして、消火器やホースの場所ができるだけサインの中に溶け込むよう、厚みのある壁に機材を内蔵させ、設置場所は分かるが目立たないように工夫している。

 

「利根沼田アカデミー 廃校の活用」

過疎地に10年ほど使われずにあった廃校を再利用するプロジェクトで、日本で不足している建設作業員の養成所でのサインだった。依頼があったのは竣工する10日前で、何かやって欲しいという曖昧なものだったが、逆にその条件に燃えて取り組んだ。概略を聞き、平面図を見て、シェアルームや廊下に作業員のグラフィックを貼り、各受講者の名前を入れられる名札のスペースを設けた。できるだけ費用が掛からないようにしながら、シート加工やインクジェット出力したものを、殺風景だった廊下の壁や校舎の外壁に付けていった。

当日は、年度末の多忙な時期にもかかわらず、多くの受講者にお集まりいただき、この場を借りて、厚く御礼を申し上げたい。

 

                             関東地区 中西あきこ

 

 

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