廣村正彰

だるまの言の葉 みんなのエッセイ
廣村正彰

Masaaki Hiromura
株式会社廣村正彰デザイン事務所
関東地区

デザインの速度

 

人が情報を受け取る8割が視覚によるものと言われている。グラフィックデザインやサインデザインは、その視覚を使って人々の行動や理解を促し、目的(地)へと導く情報伝達のデザインである。

 

サインデザインが面白くなり始めた頃、私はサインにおける情報の掲示手段に付帯的要素は必要ないと考えていた。どういうことかというと、サインの主となる誘導や定点おいて、文字や記号といった情報には、厚みや素材の質感などの装飾的な要素は不要だということ。雑味を排除し、いかに早く情報を脳へ伝達し、瞬時に認知させることこそがサインデザインの本質だと信じていた。ターミナル駅、ハブ空港、高速道路などでは、人々が最短距離で目的地にスムーズに辿り着くための、整理されたわかりやすいサインが必要になる。

 

しかし、しばらくして私は、サインデザインには「早い」と「遅い」があるのではないかと考えるようになった。サインを計画するその「場所」には、施設の目的や価値、地域性、歴史など、そこを利用する人たちへ伝えたいことが多くあるからだ。先に述べたような、絶対的に「早い」デザインが求められる場所がある一方で、スピードよりも、その施設や場所の意味や特徴を印象づけ、コミュニケーションを生み出す視覚的要素として機能するのもサインデザインの大切な役割だ。そうした「遅い」デザインでは、五感を使い、その体験自体が訪れた人の中にゆっくりと沁みていく。いまでは、そんなサインを目指すようになった。

 

サインデザインとは、「共感の器」をつくることなのだ。