江端秀和

だるまの言の葉 みんなのエッセイ
江端秀和

Hidekazu Ebata
株式会社阪神コンテンツリンク
関西地区

Hello, AI. Hello, 60th SDA.

私のサイン業界への入り口は、いわゆる末端の現場からだった。 工場での製作や取付作業をひと通り経験し、紆余曲折を経て今の会社に勤め、ご縁が重なってSDAにも関わらせていただくようになった。昔はよく、「これ一つ作るのに、こんなに手間がかかったんだ」という話を聞いた。 版下をコピー機で拡大・縮小しながら切り貼りし、少しの間違いで最初からやり直し。 けれど、そのひと手間の中には確かに“仕事のぬくもり”があった。

 

そんな時代から、いまはもうまったく違う風が吹いている。 デザインの現場も製作の技術も、驚くほどの速さで進化してきた。 そして気づけば、私たちは「AI」というまったく新しいツールと向き合う時代に立っている。 ポスターもロゴも、いまや数行の文章(プロンプト)を入力するだけでアイデアが提示される。 実際、私の担当する案件でも「AIで作ったグラフィックを使いたい」という要望が出てくるようになった。かつては“デザインをAIに任せるなんて”と思っていたが、今では少し考え方が変わってきている。 新しいツールを恐れて背を向けてばかりでは進化のスピードにもついていけないとも考える。

 

ペンがマウスに変わり、マウスがAIに変わっても、意志を持つのは結局“人”だ。 AIは感情のないペンであり、扱う人の感性しだいでまったく違う表現を描き出す。 上手に導けば、AIは人に代わる優秀なアシスタントとして、ときに想像を超える提案をしてくれる。 “描かせる”のではなく、“導く”。 これからのデザインには、そんな視点も必要なのかもしれない。 どんな時代でも、サインの根っこにあるのは“人に伝える”という想い。 これからも、人の心に届くデザインをつくり続けていきたい。一度、このあたりのテーマを議題に諸先生方のお話も聞いてみたいものだ。