SDA AWARD2024

日本サインデザイン賞2024年度審査総評

第58回のSDA賞審査が終了した。今年も審査会では、多様な視点に立った多くの議論が交わされ、優れた作品が選ばれたことは審査員の皆様に感謝したい。今回審査した作品のほとんどが2023年度に竣工したものであるが、2020年よりコロナ禍で経済活動が低迷し、さらに追い打ちをかけるように円安、物価高騰、人手不足と、おそらく今年度の作品のほとんどが、そうした影響を受けていたに違いない。施設の建設プロジェクトの中で、サイン工事が占める割合は僅かであるが、長らく「雑工事」として扱われていたサイン工事は、軒並み予算削減の標的になった感は拭えない。一方で、建築予算が削減されたからこそ、サインに力を入れたプロジェクトも現れてきたように思われる。費用対効果で言えばサイン計画によって空間を充実させることによって、建築のクオリティを落とさないで、むしろ新たな価値を生むことが、建築家や事業者たちの中で意識され始めていると言えよう。

今回日本サインデザイン大賞・経済産業大臣賞となった「株式会社古川製作所 サイン計画」や大賞を競った「千歳テクノパーク統括工場」は、生産システムや物流を支える工場であり一般の不特定多数の来客がある施設ではない。一般的には、機能性優先でローコーストが求められる施設であろう。しかし、サイン計画によって、潤いのある空間を創出し、来訪者や、そこで働く従業員に向けて豊かな環境が提供されていることがわかる。

また、大学キャンパスの作品が増えているのも特徴的だ。「金沢美術工芸大学サイン計画」、「立命館大学大阪いばらきキャンパス H棟 サイン計画」、「東京国際大学池袋キャンパス」など、いずれも大学独自のアイデンティティを押し出してきている施設となっている。その目的のためにサインが建築空間のコアデザインとなっていることが明白だ。

一方で、店舗サイン、いわゆる看板のデザインも面白くなっている。今回上位に上がった「くら寿司 台湾店」が上位にあがったのは印象的だ。過去54回、56回と同様のデザインで「くら寿司グローバル旗艦店」のデザインは受賞しており、さらにスケールアップして海外進出を始めている。「提灯」、「祭り」、「寿司」というストレートな組み合わせが、日本のアイデンティティとして、海外の人々の心に刺さる強烈なブランディングデザインに発展しているところに、デザインの力を見せつけられた気がする。

令和6年12月吉日
公益社団法人日本サインデザイン協会
会長 竹内 誠

日本サインデザイン賞 受賞作一覧