第55回日本サインデザイン特別賞
松本看板学会の活動に対して
特別賞受賞理由
松本看板学会の活動は、松本市が2013年度に実施した景観講座を契機として始まった。以降は「裏町看板学会」〜「松本看板学会」と変遷しつつも、一貫して看板をテーマとした活動を市民主体型で行って来た。飲み屋街の看板の気持ちになって物語を創作する発表会など活動は独創的だ。市内の看板を取材、店主の想いを紹介する「看板物語(『signs』に連載)」は、看板の魅力を改めて認識させてくれる秀作である。サインの専門家ではないからこそのユニークな観点、サインの専門家でもなかなか達成できない程の充実度は高く評価される。看板観察のワークショップを展開している屋外広告物関係者にも、参考になる取り組みと評価し特別賞とした。
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このたびは、私たち松本看板学会の活動に対しSDA特別賞という素晴らしい評価を賜りましたこと、驚きともに光栄に存じています。
松本看板学会の活動は2016年、かつての松本を代表する花街であり歓楽街としては寂れてしまった裏町における景観講座がきっかけでした。寂れた歓楽街に残る多数の看板を切り口にまちを考えるのも面白いと現・学会長の長谷川繁幸氏、デザイナーの高田美香氏、松本市都市デザイン担当、公民館職員と講座内容を議論する中で、遊び心で裏町看板学会を自称し、看板を見つめ、看板を読み解き、看板を表現するという看板学講座は始まりました。
毎年続けている講座では、掲げられる看板そのものである狭義の看板だけでなく、建物や設え全体から感じる看板的表徴という広義の看板という、「狭義と広義の看板」を意識することで、街の景観や都市デザインにつながるよう工夫し、学会として実際に街中の看板デザインにも関わらせて頂きました。また、日広連の情報誌signsに松本の「看板物語」を連載させていただいていることに刺激を頂き、2020年の講座では、店主の想いやまちの文化を伝え、誰もが身近に感じてくれる景観であるという看板の大きな魅力を参加者が課題として描き出してくれた記事をまとめた「私の看板物語」を出版することができました。
今回の受賞をきっかけに、今後さらに看板やサインを切り口とした景観形成や松本の文化の掘り起こしや発展にさらに努力したいと思っております。松本看板学講座コーディネーター 倉澤 聡
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私の看板物語
日本屋外広告業団体連合会発行の情報誌signsに連載している「看板物語」を参考に、「私の看板物語」執筆を講座の課題に。取材、撮影、レイアウトも基本的に参加者自らが行い、講座参加者それぞれの視点による看板の物語を執筆。大変だと言いながら参加者のみなさんの看板から紡ぎだされる面白い記事がそろいました。
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「私の看板物語」冊子版
各者の「私の看板物語」執筆内容が非常に面白かったため、記事をまとめて「私の看板物語」として出版。看板巡検
看板学講座の際は毎回行っている、看板巡検と題した看板観察のまち歩きのようす。参加者それぞれの視点で感じた看板の物語を共有する大切な時間。看板採取
花街だった裏町の看板を講座で写真により採取し、ワークショップにて講座参加者がそれぞれ気になった看板について様々な視点から話し合う。採取した看板からお気に入りを一つ選び、「看板文学」として看板の気持ちになって一人劇を行い、看板に親しむ取り組み。
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看板妄想学ワークショップ
看板観察からまちの特徴を把握し、界隈性を考えるなかでまちの未来を自由に妄想するという看板妄想学ワークショップ看板健康学
看板に対して健康診断、健康状態に応じては病名も命名するなど総合的に看板を評価した看板健康学講座。良い看板を捉えるため病理学的な要素よりも保健学的な側面を重視した。ナワテ若返りの水の看板
井戸を掘り、水場の修景整備に合わせて松本看板学会コメンテーターの高田美香氏がナワテ通りの雰囲気やシンボルであるカエルなども意識しながら湧き水の看板をデザイン鯛萬の井戸の案内看板
裏町看板学講座の番外編としてリサーチを行い、彫金師である地元町会長を巻き込み松本市が制作した鯛萬の井戸の案内看板