日本郵政株式会社 本社オフィス 応接室

日本サインデザイン大賞/経済産業大臣賞

(有)テラダデザイン一級建築士事務所:平手 健一

日本郵政(株) 本社オフィス 応接室

所在地
東京都
ディレクター
日本郵政不動産(株):齋藤隆司
デザイナー
(有)テラダデザイン一級建築士事務所 平手健一
空間設計
(株)日本設計:崎山茂、大坪泰、田口富英、讃井章、渡邉順一(元社員)、本間行人、丸山義貴
照明デザイナー
(株)YAMAGIWA:土井智子
施工者
(株)竹中工務店、(株)びこう社
カメラマン
大森 有起
カメラマン
(株)川澄・小林研二写真事務所

応募者コメント

企業イメージの一つである「切手」をサイングラフィックとして、空間全体に設えた。オリジナルグラフィックに変換した切手を会議室天井面に配置。鮮やかに彩られた天井面が来客者を迎え入れる。この天井面は外部からも視認することができ、街に対して企業の存在感を示すサインとしても機能している。グラフィックはすべて切手と同じ比率のピクセルを使用して抽象的に表現し、視距離に応じた見え方を意識した。ピクセルに使用する色には企業カラーである赤、青、緑の3色を用い、それぞれ明度の違いや色の重なりで切手の表情を創造している。また、ガラス間仕切りや各設備機器とピクセルのサイズ、位置を調整することで、グラフィックの連続性を損なわないように注意した。企業のアイデンティティをサインとして機能させ、視覚的にも大胆に表現することで、訪れるお客様や社員、街を行き交う人々に対してコミュニケーションの一つとなるように期待を込めた。

審査評

大賞を受賞した「日本郵政株式会社本社オフィス応接会議室」は、応接会議室の天井面に切手をモチーフとした天井画を配置した作品である。第一次審査はWeb上で作品を表示させて評価をしていくのだが、次々と作品が表れる中で、思わず手を止めてしまう衝撃を受けたのが大賞作品であった。壁面や床面に対する大型グラフィックや誘導サインは毎年のように見てきたが、天井に対するグラフィックはほとんどなかったからだ。切手という、施主の特色を何より表現したモチーフを用いたこと、指先にのるほど小さな切手で大きな会議室全体を覆ったというスケール感、そして屋内の天井でありながら、外部からそれを見られることに目を奪われた。プレゼン写真では、手前の横断歩道を歩く人々の姿が捉えられていたが、信号待ちをしている歩行者が、ふと見上げたときにこの作品を発見したとしたら、その驚きはいかばかりだろうと、想像するだけで楽しくなった。
 天井画は数多くの寺社仏閣で描かれてきた。しかし、近代のオフィスでは、天井は空調や照明、あるいは消防・防犯機器の設置場所となり、描かれる機会を失っていた。天井をサインとして活用するために、設備に緻密な計画が成されたことが伺える。誰もが思いつくようなシンプルなデザイン。しかし誰もしてこなかったこと。大胆さと堅実さとがと合わさった点が、作品を秀逸なレベルにしている。(武山良三)