第52回日本サインデザイン特別賞
公益財団法人日本デザイン振興会会長賞
大阪府
受賞者コメント
このたび特別賞の栄誉を授かりましたことに、厚くお礼申し上げます。
太陽の塔はご存知のとおり、1970年日本万国博覧会のテーマ館の象徴として、前衛芸術家岡本太郎氏によってデザインされました。博覧会終了後は永らく、その内部は公開されませんでしたが、万博当時の「ワクワク感」を蘇らせるべく、2016年から大阪府において内部再生事業を開始しました。
その際、特殊な構造物ゆえに難航した耐震工事を無事に終え、塔内部には当時の空気感を現在の造形・照明・音響技術で再現し、さらには、博覧会終了後から行方不明であった地底の太陽の復元などを行い、今年3月、48年ぶりに太陽の塔の内部公開が実現できました。
また、本事業の実施に際し、約2500件、約1億6千万円ものありがたいご寄附をいただき、皆さまの太陽の塔への深い愛情と今回の取組みへの大きな期待を感じた次第です。
今後より一層、多くの人々にご鑑賞いただけるよう、優れたデザイン性や内部再生事業の意義をPRしてまいりますので、ご支援のほどよろしくお願いします。
特別賞選定理由
2018年の、この「太陽の搭内部再生事業」とは何を意味しているのか。信じがたい戦後のエネルギーによって完遂された「70年大阪万博」の記憶は、これまで「太陽の搭」が一身にこれを担ってきた。「塔」という視覚的な象徴が、万博の精神をつないでいてくれた。万博は、戦後未曾有の技術革新と経済発展とを遂げた日本が、その実力を世界に誇示した世紀の祭典であった。しかしいっぽうで「太陽の搭」は、その内部に、人類の進歩や発展以上に「重要な思い」を秘めて構築された精神的シンボルである。当時は夢と混乱の中でこれらに気付くこともままならなかった。また長きにわたりこれらは封印されていた。「いのち」「ひと」「いのり」、そして内部を貫く巨大な「生命の樹」。生物学、文化人類学の想像力による膨大な絵巻である。生とは何か。再生事業はふたたびこの内部空間展示を復元し、大阪万博の熱狂や発展の背後に隠されていた、人類のための最も重要な「理念」を、ここに再生したといっていい。この半世紀、日本は技術も経済も、とんでもない進歩を遂げた。2年後の東京オリンピック、そして2025年の大阪・関西万博の開催誘致へと、発展の未来をめざしている。が、おそらくもっと重要な「普遍的理念」を忘れてはならないとのメーセージがここにある。これは世界人類に向けられた、現代のサインではないか。(山田 晃三)